日本現代美術

’86G

田中敦子

制作年 1986
材質、技法 合成樹脂エナメル塗料、 カンヴァス
寸法 218.0 × 333.0 cm
著作権 © 2024 Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

1932年大阪府生まれ。1953年頃、大阪市立美術館付設美術研究所で共に学んでいた金山明の助言で、コラージュ作品《カレンダー》を手掛けたのを転機に、抽象美術に対しての関心を深めていった。

その後、金山明、白髪一雄、村上三郎らが、先鋭な美術を目指し結成した0会への参加を経て、1955年に具体美術協会へ参加。観客がスイッチを押すと会場内の床に設置された20個のベルが順に鳴り響く《作品(ベル)》や、9色の合成樹脂エナメル塗料で塗り分けられた約200個の電球・管球を不規則に点滅する光の衣服に仕立てた《電気服》を、作家自ら着用して発表するなど、音や電気、あるいは空間や時間といった、視覚だけでは捉えることのできない素材の組み合わせを取り入れた実験的で斬新な田中の作品は、具体美術協会の中でも突出した異彩を放ち注目を集めた。

その後、作家の創作は平面作品への移行を見せ、電気服の電球と配線に対応する円と線から成り立つ絵画群を生涯描き続けた。《’86G》もその作品群のうちの一つである。田中がエナメル塗料を用いて描く円と線は、表面上で艶やかさを強調しつつひしめき合い、絡み合うことで、肌に張り付くような表面的広がりを顕示し、見る者の皮膚感覚に訴えかける。この特異な表面性に対する志向は、《電気服》に見られる身体の可視的表面に対する田中の関心の延長線上にあるということができるだろう。