日本現代美術

EPITAPH

遠藤利克

制作年 1986 / 1991
材質、技法 木、鉄、タール、水、(火)
寸法 80.0 × 133.0 × 78.0 cm
著作権 © 2024 Toshikatsu Endo

1950年岐阜県生まれ。1960年代から70年代にかけて芸術の原理をラディカルに問い直したミニマリズムや「もの派」の洗礼を受けながらもその思想に対して批判的な意識を向け、それらの地平を越えることを課題として、焼成した木、水、土、金属などを用い、〈円環〉、〈空洞性〉等を造形の核とし作品を発表してきた。1980年代には、ドクメンタやヴェネツィア・ビエンナーレにも出品、北欧と英国で巡回展を行うなど、日本を代表する彫刻家として、国際的にも高く評価されている。

美術における物語性の復権を掲げた遠藤の作品では、舟や桶、柩(ひつぎ)などのモチーフが古(いにしえ)の文化や神話的な物語を喚起する一方、水や火などのプリミティヴな要素が、人間の生命の根源にある生と死といった感覚を私たちの中に呼び覚ます。作品の圧倒的な物質感や大きさは、私たちの身体感覚にダイレクトに働きかけ、畏怖と恍惚が、そして生と死が一体となった、より高次元の感覚へと観る者を導いていく。

《EPITAPH》の素材の表面は炎で漆黒に焦がされ、内部の空洞には水が入っている。これらの作品の構成要素は、これ以上還元できない非常に安定した物質として私たちの目の前に出現し、私たちに物質を通じて大地と繋がるような感覚を呼び起こさせる。遠藤の作品は世界の不可視の構造へ私たちを引き込もうとするのだ。