日本現代美術

襟裳岬(「鴉 」より)

深瀬昌久

制作年 1976
材質、技法 ゼラチンシルバープリント
寸法 25.3 × 35.6 cm
著作権 © 2024 Masahisa Fukase Archives

1934年北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。日本デザインセンターや河出書房新社などでの勤務を経て、1968年に独立。1960年代初期よりカメラ雑誌を中心に写真作品を多数発表。写真表現を通して「私性」と「遊戯」を追求した写真家として知られる。

深瀬は自身の妻や家族、飼い猫、自分自身などを被写体とし、自身の私生活を深く見つめる視点によって、1960年代の日本の写真史のなかで独自のポジションを築いた。1976年の春、深瀬は破綻した結婚生活から逃れるように幼年期の原風景が残る北海道に向かい、網走、襟裳岬などを訪れ、同地に数多く生息するカラスにレンズを向けた。東京に戻り山岸章二に写真を見せると、カラスがよく映っていたことから「烏」を題名にすることを薦められ、1976年に、15年ぶりとなる写真展「烏」を開催した。この展示により翌77年に第2回伊奈信男賞を受賞し、「鴉」は深瀬の代表作の一つとなった。その後も自身を被写体とした「私景」シリーズを発表するなど精力的に活動を行ったが、92年6月深瀬は行きつけのバーの階段から転落し、重度の後遺症を負ってしまい以降は特別養護老人ホームで介護を受けながら過ごし、二度とカメラのシャッターを切ることはなかった。

2014年にトモ・コスガにより深瀬昌久アーカイブスが設立され、回顧展の開催や写真集の復刊が相次ぎ、長らくベールに包まれていた作品群の全貌が明らかにされた。