日本現代美術

Les Temps Modernes(現代)

今井俊満

制作年 1956
材質、技法 油彩、樹脂、砂、カンヴァス
寸法 200.0 × 300.0 cm

1928年京都生まれ。東京芸術大学美術学部油絵科で学ぶ。1952年第1回フランス政府給費留学生として渡仏し、アンフォルメルを主宰した評論家ミシェル・タピエやサム・フランシスとの出会いを機に抽象画に目覚め、重厚なマチエールと激烈な色彩によるダイナミックな作風を展開した。

1956年には東京や大阪で開催された「世界・今日の美術展」で日本に初めてアンフォルメルを紹介し、日本の美術界にアンフォルメル旋風を巻き起こした。1960年のヴェネチア・ビエンナーレなどの国際展にも多く出展するなど、アンフォルメル運動の中心的な存在として国際的に高く評価された。その後は、詩画作品などを試みた後、1983年頃から日本の伝統美を蘇生させる「花鳥風月」シリーズに着手、90年代後半には「広島」や「長崎」などの戦禍の図に取り組んだ。20世紀末には死を目前に大きく作風を変化させ、当時社会現象ともなっていた「コギャル」を題材にした新作を発表する。このように今井は作家人生を通じて、次々にテーマを変貌させていきながら独自に日本的なるものを追求していった。

《Les Temps Modernes》は具象表現が完全に消え去り、純粋で色彩豊かな抽象表現に移行した最初のシリーズである。ナイフや筆で絵の具が投げ込まれて作り出された鮮やかで厚みのあるテクスチャからは、今までの自分の表現を捨てて新しい表現方法を開発する今井の格闘の痕跡を感じ取ることができる。このシリーズは高く評価され、作品は大西洋を渡り、58年にはニューヨークのシグナ・ギャラリーで展示された。