日本現代美術

無題

篠田桃紅

制作年 1965
材質、技法 墨、金箔、銀・紫の顔料、板に貼付した絹
寸法 91.0 × 227.6 cm

1913年旧満州国大連生まれ。幼少期より父から書の手ほどきを受け、23歳で書道家として独立したが、篠田の独創的な文字は当時の書道界に受け入れられず、やがて抽象表現を志向するようになる。戦後、43歳の時に単身アメリカに渡り抽象表現主義の隆盛を目の当たりにしながら、篠田作品の造形は現在の形に急速に近づく。1965、68、77年の三度にわたって開催されたニューヨークのベティ・パーソンズギャラリーでの個展が篠田の海外での評価を確実にした。作品は大英博物館、メトロポリタン美術館、東京国立近代美術館等世界中の代表的な美術館に収蔵されている。

《無題》(1965年)は、篠田が帰国後日本での制作の基盤を固めた時期に描かれた作品であり、渡米を経て獲得した新しいかたちを見て取ることが出来る。画面上にあるいくつかの太い線は、線としての緊張感を保ちながらも面を構成し、篠田作品特有の空間を出現させている。