朱とだいだいの丸
オノサトトシノブ
制作年 | 1957 |
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材質、技法 | 油彩、カンヴァス |
寸法 | 41.5 × 31.8 cm |
1912年長野県生まれ。日本における抽象絵画の先駆者と評される。ヴェネツィア・ビエンナーレに出展するなど国際的にも活躍し、戦後画壇で異彩を放った。1935年二科展初入選と同時に、若手作家と共に前衛グループ「黒色洋画展」を結成し美術作家としてのキャリアをスタートさせる。1940年にはすでに、キュビズムや構成主義の影響を受けつつ完全に幾何学的な構成を持つ抽象絵画を生み出していた。
その後、兵役とシベリア抑留による七年間の中断を経て、1955年頃、内部を単色で均一に塗った円を複数並べたり、あるいはそうした円を画面中央に一つだけ配して、その周囲を水平線と垂直線による緊密な網目によって埋め尽くした独自のスタイルに到達した。
《朱とだいだいの丸》はちょうどその時期の作品であり、絵画制作のあり方を「円」によって限定し、色彩と線によって構成された純粋な抽象絵画の可能性を追究したオノサトの姿勢を窺い知ることができる。1960年以降は円の内部をさらに分割し、抽象の精度を高めた。その後もオノサトは、油彩、水彩、リトグラフ、シルクスクリーンなど多岐に渡る手法で自己の芸術世界の探究を推し進め、独自の絵画表現を展開した。