日本現代美術

作品

元永定正

制作年 1961
材質、技法 油性合成樹脂塗料、 カンヴァス
寸法 71.0 × 114.0 cm
著作権 © 2024 Motonaga Archive Research Institution Ltd.

1922年三重県生まれ。1940年に大阪中之島美術研究所に入所。1955年「具体美術協会」に参加し、1971年まで中心メンバーとして吉原治良に師事する。未知なる自然を創作の源とし、煙を使ったパフォーマンスなど、斬新な素材を用いて自然現象を表現した実験的な作品を発表。その後、絵具や塗料を直接キャンバスに流し込み川の流れや細胞分裂といった自然現象を示唆するような流動的な抽象絵画を発表し注目を集めた。

1966年ニューヨークに滞在以降は、制作初期のスタイルであったコミカルで遊び心あふれる抽象絵画の追及を再び始め、70年代からは『もこ もこもこ』(文・谷川俊太郎)など絵本も数多く手がけた。2000年代に入ると、海外の美術館やアートマーケットでの具体美術の再評価とともに元永の評価もまた揺るぎないものとなっている。

《作品》には絵具流しが用いられている。絵具流しは元永の代表的な表現の一つで、日本画の「たらし込み」から着想を得たものである。この技法を用いた作品は主に1958年から1966年に渡米するまでの期間に制作された。綿密な計画のもと、あらかじめ構成を考えた後に、斜めに傾けたキャンバスに絵具をゆっくりと流し込んで作られている。また、気に入らないところに絵具が流れてしまうと拭き取りつつも、自分の意志を超越した自然の力による思いがけない表現を面白がり、必然の中の偶然も重視した。このように、元永の作品は、絵具の物理的特性、重力という自然の力、作家の創意という三要素によって生み出されたと言える。