
森山大道写真展
―北海道〈序章〉
僕は北海道が好きだ、などというよりも、僕にとって北海道はおそらく終生変わることのない〈我が愛〉なのである。
「犬の記憶」より
商業デザイナーを経て、写真家・岩宮武二や細江英公のアシスタントを務めていた森山大道が、フリーの写真家としてデビューしたのは1963年のことでした。カメラ雑誌などを中心に発表された粒子の粗いハイコントラストの表現は“アレ、ブレ、ボケ”と形容され、当時の日本の写真界に大きな衝撃をもたらします。最初期の代表作「にっぽん劇場写真帖」(68年)や、写真とは何かをラディカルなまでに追求した問題作「写真よさようなら」(72年)は、今も日本写真史に残る傑作写真集のひとつに数えられています。その森山が「写真よ…」以降に味わった長いスランプから再起を果たす契機となったのが、78年夏の札幌滞在でした。
三ヶ月という期限つきでアパートを借りたぼくは、その間、雨降りでさえなければ(雨の日でも撮るべきだった)、とにかく自分の決めとして連日カメラを持って外出した。…中略… バスに乗り列車に乗って北海道のあちこちを写し歩いた。まれに一泊となることもあったが、ほぼ連夜、重い足を引きずってアパートに辿り着き、寒い部屋でひとり食パンをかじりウィスキーをなめ、また得体の知れない憂鬱にとりつかれて長い夜を苛々と過ごしていた。
「犬の記憶 終章」より
しかし、このとき撮影された無数のカットは、殆どが発表されることもなく、フィルム現像の段階で保管されたまま今日まで眠りつづけていました。森山大道写真展「北海道」では、およそ30年振りに見直されたこれらのネガの中から、入念なチェックを経て新たにプリントされた約2,000点を、会場ごとに地域や展示コンセプトに沿ったそれぞれの構成で展覧するユニークな試みです。
2009年6月26日(金)- 2009年9月27日(日): 札幌宮の森美術館
2009年7月11日(土)- 2009年8月23日(日): 夕張市美術館
2009年7月29日(水)- 2009年9月28日(月): アルテピアッツァ美唄
2009年9月12日(土)- 2009年10月4日(日): 札幌パルコ 本館
※東川町文化ギャラリーは第2章へ変更となりました