
粟津潔展
―思考する眼差し、絵画するイメージ
本展は、粟津潔北海道初の個展です。
1929年東京目黒区に生まれ17歳の頃から絵を描き始めますが、技術の習得はもっぱら美術雑誌の模写や電車内での人物デッサンなど独学によるものでした。やがて左翼運動に没入、生活のためにキャバレーの壁画やパチンコ台の装飾画などを手掛けるようになりました。
1954年、独立映画社宣伝部の嘱託となりチラシの下書きやポスターの制作に携わると、すぐ翌年の1955年には、漁民による米軍基地反対闘争のためのポスター「海を返せ」で日本宣伝美術会日宣美賞を受賞、以来、粟津は日本を代表するアーティストとして国際的な舞台で活躍、その旺盛な好奇心はデザインにとどまらず、絵画、立体、写真、映画、舞台、建築、環境、と無数にその触手を伸ばして行きます。
造形する、美術、デザインするということは、自由な精神の奥底に眠っているものを起して、作品というモノをつくりだす仕事ある。その言葉どおり、一点の絵画作品とも言える彼のグラフィック・ワークやデザインには、自由で大胆な発想とともに奥深い精神性を見ることができます。
昨年末から金沢21世紀美術館で開催された大規模な展覧でも新たな世代のファンを獲得し、同時代的な評価の機運が高まる今、本展では作家のマルチな才能の一端をご紹介いたします。