一歳半になったボクの初孫が、連れ歩く先々でなにかと「お持ち帰り」したがるので少々手を焼いている。だから「宇宙」を「お持ち帰りしたい」などという途方も無いワガママに大真面目につきあったJAXA、NASAその他大勢の関係者は実にエライと思う。そしてそんなワガママをモノにしたあげく、アート作品に仕立てていろんな人たちに見せてまわっている松井さんという人もかなりスゴイと思う。そして、彼の作品「手に取る宇宙―Message in a Bottle」を手に取って歓声をあげる子供たち、じっと考え込む大人たち、それぞれがみ~んな面白いと思う。かく言うボクも手に取らせていただいたひとりだが、まるで宇宙の尻尾でもつかんだみたいな不思議な気分を味わった。

「Sense of Wonder(不思議の感覚)」と松井さんは言う。松井さんはそれを彼がつくる魅力的な造形だけでなく、その内側と外側、こちらとあちらを行き交う微かな「気配」をとおしてボクらに体験させてくれる。瓶詰めの「宇宙」を手にしたボクらも、いつもは見上げるばかりの「宇宙」との間に、何か特別な「気配」が生まれるのを感じ取ったはずなのだ。

スティングが唄う「Message in a Bottle」で繰り返されるS.O.S.の叫びは、孫のおもりを日課とする今のボクには似つかわしくないが、これだけは断言できる。今度の松井紫朗展も超のつくS.O.S.すなわち「すっごく、おもしろい、ショー」だと。
「不思議の感覚」いっぱいの知的な冒険をお楽しみに。
―札幌宮の森美術館館長 村田 隆