
マイケル・ケンナ写真展
風景に刻まれた記憶
大地を覆う白い絨毯、ビュランの刻線のような裸の樹々。
静謐な空気に充ちたこれらの冬景色は、わずか20センチ四方の小さな空間にもかかわらず、まるで全身をすっぽりと包み込んでしまうかのように、私たちを深い思索の底へと引き込んで行きます。
イギリスに生まれアメリカを拠点に活動を続ける写真家マイケル・ケンナが、北海道の風景、とりわけ雪と氷の織りなす詩的な光景に惹かれ、撮影を始めたのは2002年のこと。以来ケンナは毎年のように北海道を訪れ、その美しくも剥き出しの野生の中で、被写体との一瞬の出会いを彼の記憶とともにフイルムに収めて来ました。
死と隣り合わせの過酷な厳冬の大地で、折りにふれ出会う人々との温かな交わりに癒されながら。緊密で純粋な眼差し、シンプルな構図、微かにふるえる光と影、そのあわい。独自の感性と卓越した技術から生み出された一枚一枚のプリントは、どれも鑑賞者のイマジネーションをかき立て、創造的なインスピレーションに満ち溢れています。それはまさに文字によらない詩の世界といって良いでしょう。
本展では、風景写真の第一人者として世界的に高い評価を受けているマイケル・ケンナの「北海道」及び、30年以上に渡り世界各地で撮影した作品約130点を紹介します。