野村佐紀子は、写真家を志した日から、“カメラを持たずにいた日は2日あったけれど、それは自分にとって人生に必要のない日だった”という。また、“写真に撮ってはいけないものは、それは私の人生に必要のないもの”と言い切るほど、彼女にとって写真と実人生は、全くの重なり合った存在のようだ。

主に、男性を被写体としたヌード写真で知られる彼女だが、なんでもない街角の風景やモノ、そして日常の出来事などカメラの前に広がる世界は、被写体としてすべて等価だという。そしてそれらのモノ、コトたちが、“撮れ”といって迫ってくるらしい。今までに知られてきた男性ヌードの作品群は、野村佐紀子の写真世界の断片でしかなかったのだ。

今回の展覧会は、モノクロ、カラー、ポラロイドと、様々な手法によって写し撮られた日常の風景、出来事で構成された、野村佐紀子の写真世界の総体を見せる初めて展覧会となるだろう。